イギリスといえば愛犬家が多い。フランスもドイツもヨーロッパ中どこでも多いが特に犬と飼い主の仲がよいように思える。そういえばイギリスの動物愛護協会はいつも日本の動物が虐待されていると噛付いてくると聞く。たしかに公園などに行ってみるとかならず犬と飼い主が遊んでいる光景に出会う。良くしつけられた犬はさまざまな芸を見せてくれる。
犬は家族の一員として位置づけられているようで、種類によってはまったく鎖につながれることなくあちこちを散歩していることも多い。我が家にも平助という犬がいるが、どこからみても雑種で、一生懸命仕込んだにもかかわらず、芸といえばお手とお座りぐらいで、鎖を外すと誰を噛むか分かったものじゃなくていつもつながれの身で居るのとはえらい違いだ。
注意してみていると、放し飼いされている犬は種類が決まっており、もともと介護犬などの用途に限定されて品種改良されたもののようだ。だから番犬などが放し飼いにされることはないし、逆に、放し飼いにされるような品種は番犬にはならない。もちろん雑種もいるにはいるが、意図的に掛け合わされたものが多い。そこで一律に鎖につながれなければならない日本の犬を見ると、まるで虐待されているように見えるのだろう。
そんな訳で、放し飼いの犬は公園などで堂々とご主人様とボール遊びなどに興じることが出来るらしい。
ある時、子供連れのおかあさんと、その飼い犬が歩いているのを見かけた。おかあさんは手押し車に小さな子供を乗せ、ボールをくわえた大きな黒いラプラドールとおぼしき犬を従え歩いていた。
しばらくするとそのおかあさんは向こうから来た近所の奥さんらしい人と立ち話を始めた。と、そのワンちゃんはくわえたボールをおかあさんの足元に置きじっとお母さんの顔を見はじめた。ワンともいわず、ただ見つめているだけだ。子供は知らん顔でなんだかむにゃむにゃ言っている。
あれ?あのボールは子供のおもちゃじゃないのかなと思いながら見ていると。いきなりそのおかあさんボールをボカンと蹴った。それを見るや否やものすごい勢いでその犬は猛然とボールに向かってダッシュして即座に持ってかえって又おかあさんの足元に置き、ふたたびじっとみつめなおした。
そうあのボールはワンちゃんのおもちゃで、ボール遊びは彼(彼女?)の趣味だった。その後えんえん飽きることなく、立ち話が終わるまでそのワンちゃんはボール遊びに興じていた。
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