通販にもお国柄が出るもので、イギリスは比較的日本と似ている。アメリカのように人口密度の低い国では地方に住んでいる人の需要が大きいため品揃えの良い百貨店のような通販が多いが、人口密度の高い国では日常的な品は近くに店があるため競争にならない。そこでいきおい隙間的な品物中心の、いわばいかにもな通販グッズが存在する。
例えばかさが大きくて持ち帰りにくいものとか、買うのが恥ずかしいもの、売れる頻度が少なくて店に置いては効率の悪いものなど、とくにアイデア商品でちょっと見るとすごく”便利そう”な品が多い。
私はあまり通販は利用しないがけっこう笑える品が少なくないのでカタログを見るのが大好きだ。店先においてあったり、日曜紙と一緒に新聞に挟んであったりするとよく目を通しては楽しんでいる。
日本によくあってイギリスに無い物も多い。例えば押し入れダンスや掘ゴタツグッズなどは生活様式が違うので当然無い。一方ではイギリスですごく大々的に宣伝しているのに日本に見られない物も多く存在する。
例えばダイエット調理用のグリルパン。これは鋳物製で底にすのこ状のでこぼこがあり、ちょうど溝の深い洗濯板状になっている。おっと洗濯板なんて見たことない人の方が多いか。早い話がイラストの様な厚手のフライパンで、肉を焼けば油は溝の底に落ちてしまい、脂肪分の少ないヘルシーなステーキやグリル料理が出来るとうたっている物だ。彼らは一体何人前かと思うほどの肉を食べる。ビーフやチキン、ラム肉等はほとんどグリルして食べるので、このような品物がヒット商品になるのだろうと思う。
私なら油の抜けた堅い肉をたくさん食べるくらいなら、霜降りたっぷりのやわらかい肉を半分にした方がよほど良いと思うのだが、食欲と言うのは恐ろしいもので、おいしい油を抜いてまで満腹感を味わいたいようだ。まあ、コレステロールが押さえられるだけましと言った所なのだろう。
不思議なのは油を減らそうと努力する一方で、あまいものはたらふく食べていることだ。例のグリルで油を落とした肉を腹一杯食った後で、デザートに大きな、砂糖のたっぷり入った甘いケーキを、これまた砂糖たっぷりの紅茶と一緒に食べるのだから余り効果は出てこないように思う。
もっとも、効果が無いからこそあのような品物がいつまでも人気を保つことができるのだろう。
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