風が吹けばなんとやら


イギリスの農村風景といえば良く出てくるのが石垣。日本で言うと田圃の畔のようなものだが高さは1メートル以上あってその歴史はおよそ3、4世紀に及ぶ。もちろん隣の敷地との境界線であるが、おもに羊を飼育しているためによそに羊が逃げ出さない為の垣根の役目も兼ねている。

enclose

同じ様に羊を飼う他のヨーロッパ諸国には余りこの様な景色を見ることは出来ない。というとははーん昔世界史でならった囲い込み運動だなと連想された察しの良い方、あなたはよく勉強なさってます、え、みんなそうなのなあんだ。

とにかく、この囲い込み運動がなかったとしたらあの産業革命は起こり得なかったし、大英帝国もビートルズも存在しなかったといえばちょっとオーバーか。
それでも、産業革命のひいてはイギリスの繁栄の一つの大きな要因となったのは間違いの無いことだ。

そもそも、南部地方の一部をのぞいて、イギリスという国はあまり農業に適してはいない。土地はやせているうえ気候に影響されにくいジャガイモなどを食べる習慣もなかった。当然一部の領主や大地主が大勢の貧しい農奴や小作人を使い細々と質の悪い穀物を収穫していた。そこへ沸いてきたのが、大航海時代をへて植民地との貿易で儲け豊かになった市民層の糸へん需要だ。羊毛が高く売れるとなると領主や地主は羊に飛びつき、どんどん領地を石で囲いそのなかで羊を放牧しはじめた。
手間もいらず人手も僅かでしかも収穫した羊毛は高い値で飛ぶように売れる、その結果あの延々続く石垣が出来上がってしまった。

では過酷な生活を強いられたあの農奴や小作人はどうなったか。あっさり首になって、食い詰めた彼らは都市部へ流れて行った。この降って沸いたような安い労働力と、毛織物の需要を資本家が見逃すはずがない。イングランド中北部は工業化にまっしぐら。産業革命をへていっきょに貧しい田舎の国だったイギリスはヨーロッパ一の先進工業国に生まれ変わってしまったということでした。

そんなわけでビートルズの生まれたリバプールなどはその工業化以後発達した都市だから、城もなければ大聖堂もない、町としては無味乾燥な場所という訳だそうだ。え、大聖堂はあったって?いやたしかに有るには有るんですがね、あれは今世紀になってから建てられた、立派ではあるが歴史のないものなんですとさ。


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