気がつけば物置小屋




初めてオーダー車なるものを作ったとき、いとおしくていとおしくて床の間に置こうとしたが家人に大反対されしかたなく縁側に置いた。
しばらくすると又新しい自転車が欲しくなった。作るときに相談などしないから、突然出来上がったフレームを持って帰ると前の自転車を処分しろなどととんでもないことを言う。車種が違うとか、どんなに自転車を愛してるかとか(もちろんお前の次にという一言は忘れないが)説明して無理やり納得してもらった。

3台、4台と増えて行くともう新しいフレームを持って帰っても何とも言わなくなった。言わなくなったが何かのひょうしに邪魔だ邪魔だとうるさくてしようがない。とうとう家を建て替える時に、念願でもあった自転車部屋をプランに入れることにした。

勿論費用もかかることだし馬鹿でかい部屋というわけには行かない、建築屋さんと相談し、勝手口に5.5畳のスペースを取ってもらうことにした。勝手口にしたのは出し入れの便を考えてのことだった。まさか独立した自転車専用入口を別に作るというのも立地条件他の関係でかなわずまあいいかということで家は完成した。

これがいけなかった。自転車部屋を作ったことがいけないのではない、勝手口のそばというのがいけなかった。

最初はパーツ用に作った棚にちょっと置かせてねといってスキーやキャンプ用品、運動具。缶ビールもらった、缶詰もらった、この服邪魔ね、この靴置かせて、気がつけばすっかり物置になっちまった。納戸はちゃんと有るじゃないかといっても無視されるし、くどく抗議すると納戸に連れて行かれた。なるほど一杯だ。何かで読んだ電気冷蔵庫の法則って奴か、結局頻繁に出し入れするものは自転車部屋、デッドストックは納戸ということになってしまった。

本来組み付けや調整に使おうと開けておいたスペースは無くなったばかりか、現在吊しておいたり引っ掻けている自転車さえ邪魔だと言われはじめた。ちょ、ちょっと待て、もともとこの部屋は自転車の為の物じゃなかったのか。まるで物置に自転車を持ち込んだように言われるなんてあんまりじゃないか。

という訳で、現在は新しい自転車を作るならば古いものを処分してねときつく言われている。もっとも数年前の自転車ブームとシマノの独占以来すっかり自転車のハードに興味を失い私自身作る気もなくなってしまった。
たしかにやりたいことは全てやってしまい、次に欲しい物がなくなってしまったこともある。ブランドや新素材に興味のない私にとって残る楽しみは骨董パーツ集めしかないかも知れない。


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