サスペンションシステムは微妙だ。本来どのような路面にも最適なセッティングなど有りはしない。土の山道と岩場、砂利の林道では弾性率と減衰率それぞれの組み合わせが皆違ってくるはずだ。
同じ路面でも、ライダーの体重や走行スピード、技量によっても又変わってくるからややこしい。もしレースで少しでもタイムを縮めるために使用するとなると大変だ。最適なセッティングの為にコースに合わせて何度もトライアルを繰返し熟成して行かねばならない。
一方、ツーリング用として見たならその利点は居住性と、耐パンク性だ。となると、性能的にはむしろ耐久性やメンテナンス性を主眼とすべきだ。
私が使っているのは初期の頃のエアスプリング、オイルダンパータイプだ。エアー圧を調整することによって弾性を、オイルダンパーのニードルを調整することにより減衰を簡単に変えられる。などというとバリバリのレーサーかというととんでもない、まったくのツーリストだ。
もし私がレーサーならエラストマータイプを使う。走行中に調整することなどないからサスペンション自体に調整機構は必要ない。何種類かのサスペンションを用意してサスペンションごと交換すればよい。それよりレース中さえ無事走ってくれれば、その後の耐久性などどうでもよい。
よく、エラストマータイプはメンテナンスフリー等という人がいるがとんでもない、エラストマーの耐久性を考えるとしょっちゅう交換すべきだし、シリンダーロッドのはめ合い精度もそれなりだから偏摩耗も早い。しかし、軽量なことと、走行トラブルの少なさはどう見てもレース向きだ。1度使うと捨ててしまう、うーんかっこいい、いさぎよい。レースなどというとそれくらいの思いきりが必要だと思う。
ツーリングといえばどんな路面が現れるかわからない。調整機構はありがたいし、メカニカルであってもそれほど極限での使用はないのでこわれる心配も少ない。オイルシールの関係で精度の良い鏡面研磨をせざるを得ないから、ブーツをはめて防塵すれば摺動部の耐久性も充分だ。
難を言えば重い。重いが一秒を争うわけじゃなし、安全に快適に、しかもパンクの心配もなく坂を下れるサスペンションフォークは本当にありがたい。
同じ理由でリアサスは使わない。リアサスの利点は特に下りのペダリング時に駆動力をロスしない事だ。ハハ一秒を争うわけじゃなし。登り?登りはトラクションをどうこういうほどスピードが出ない。私の用途ではオイルサスにリジッドリアの組み合わせが一番、そう信じている。
イギリス独り言
ランサム サガ