パスハンティングといっても範囲はきわめて広い。極端に言えば峠さえ越えればパスハンティングだ。実際、5万分の一図を見て良い林道だなあと思って行ってみると、見事な舗装路になっていたりすることはしょっちゅうだ。となると、山屋さんのような服装にぶっとい650Bタイヤが場違いに見えてしかたがない。横をレーサージャージーに身をつつんだロードの集団に追い抜かれたりすると情けなくなってしまう。
もっとも、逆にロードでダートのパスハンを敢行した日には、タイヤは予備までバースト、おいしい下りを押して下るという情けないことになってしまう。それにも増して登りが悲惨だ。42T×21Tで登る力が合ったとしても、タイヤはスリップし空しく転倒という憂き目に合うに違いない。
そこでよくやるのが、ロードを改造、タイヤはサイドのゴムの厚いクロカン用に変え、小さなインナーと大きなフリースプロケットを装備する。私もやってみた。ついでに下りに強いようにハンドルもオールラウンダーバーにして、バーコンも取り付けた。
これはまことに具合がよくて、アプローチが長く、短い急なダートの登り下りの多い中国山脈の日帰りパスハンには最適なように思えた。おまけにかつぎが入るとその軽さがとても嬉しかった。おかげで、泊まりがけ以外はこれを使うことが多くなった。
しかし、人間欲を言い出すときりがないもので、登りとかつぎは快適になったが、肝心の下りがよくない。われわれは下りが楽しくて自転車に乗っているようなものだから、登りが楽になったところで意味がなくなってしまう。

そんな訳で、とうとう登りも下りも楽な自転車を作ろうということにした。どんな地形でも走れる自転車にはクロカンのフレームが最適だと考えた。衝撃を良く吸収するように柔らかいフレームに柔らかいフォーク、太い700×35Cも履けるようにリアセンターをたっぷり取り、泥づまりしにくいようチェーンステイとのクリアランスも大きくした。
これで、下りは随分楽になった。もちろん登りも、平坦路までも俊発性さえ気にしなければまことに快適に走れる。琵琶湖一周サイクルマラソンもずっとこれを使っているくらいだ。どれで走ろうか迷ったときにはこれを持って行くようになった。いわば私の十徳自転車と言えるのではないだろうか。
イギリス独り言
ランサム サガ