お子様自転車



子供がまだ小さい頃、一家揃ってサイクリングするのを夢に描いていた。もちろんわれわれ自転車マニアはこま付きのお子様自転車とママチャリの組み合わせに我慢できるはずも無い。2人の子供が幼稚園に通いだした頃を見計らって、本格的なツーリング車を組むことにした。

行き付けの自転車やさんで相談するとえらく困った顔をされた。とにかく、今の日本でそんな小さな自転車を既製品で作っても誰も買わない。需要が無ければ作らない。第一、小さすぎて、作ろうにも治具から作らなくてはならないと言われた。

なるほどもっともだとは思うがこちらはいったん言い出した手前、引っ込むわけには行かない。散々粘った挙げ句とりあえずビルダーに声だけはかけてみましょうということで其の場は収まった。

しかし、何でも言ってみるものだ。作ってみましょうといってくれる篤志家のビルダーがいた。彼らは勿論商売にはしているものの、やはり本当に自転車が好きらしい。当時の値段でフレーム1本3万円程で作ってくれることとなった。なるほど小さいが、子供用のパイプがあるわけじゃなし、フォークが1本で済むはずもなし。手間も材料もほとんど変わらないのにこの値段、本当に感謝した。

フレームが出来たら出きたで今度はパーツが揃わない。まさか165ミリのクランクを付けるわけには行かず。鋳物のコッタークランクなどもってのほか。やれハンドルバーがない、ブレーキレバーがでかすぎるとすったもんだの末みごとなランドナーが出来上がった。かっこう良くてしかもまことに軽いこの自転車に大喜びの子供たちと我々夫婦は勇躍サイクリングに行ったものだった。

月日が流れるのは早く、5年もするとすっかり小さくなって、マウンテンバイクに改造したり、ついには第二のご主人様に望まれて貰ってゆかれた。そこでも丁寧に使われていることを願って止まない。


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